明日菜のおみやげ 第二話


2003年4月23日。
修学旅行二日目。
京都、ホテル嵐山。

私、神楽坂明日菜は今日も一日の出来事を振り返っていた。
今日は朝倉に魔法がばれた。個人的に、一番ばれてはいけない相手にばれてしまった気がするんだけど、どうやら朝倉はこちらに協力体制をとってくれるみたい。
どこまで信じられるかはわからないけど、今のところはこのままにしておくしかないか。






「すいませんです、アスナさん。のどかのことを考えていて、加減をするのを忘れていました」

ここは奈良公園。
さっきまでネギと桜咲さんとで一緒に歩いてたんだけど、突然不意打ち気味に夕映ちゃんの飛び蹴りを喰らって、私一人だけ別のところへ連れてこられてしまった。

「アタタタ……。なかなかいいキックだったわよ、夕映ちゃん」

私の顔には彼女の足跡がまだ残ったんだけど、飛び蹴りには「いっかげん」ある私から言わせてもらえば、まだまだね。
もう少し体重を乗せないと威力のアップは望めないわ。実際喰らう方の身としては、アップされても困るんだけど。
そういえば、「いっかげん」てどういう漢字書くんだろう?

「まあ、いいじゃない、アスナ。これでのどかとネギ君が二人きりになれたんだから」

パルはこう言うけど、ネギと本屋ちゃんが二人きりなったところで、私になんに利益があるっているのよ。
眉を顰めてパルをにらみつけてやったんだけど、パルはその視線の意味を誤解したみたい。

「あれあれ? アスナ〜。ネギ君が気になる〜?」

これ以上ないってくらい極上の邪悪な笑みをうかべながら、私に迫ってくる。
なれなれしく自分の肘を私の肩に乗せて、私に言う。

「ダメよ〜、アスナ。人の恋路を邪魔するヤツは、鹿に蹴られて死んじまえ、っていうじゃない」
「ハルナ、それを言うなら『馬』に蹴られて、です。」

夕映ちゃんがすかさず訂正する。

「アハハ。アスナの場合、『馬』と『鹿』、両方に蹴られちゃうかもね」
「ちょっと、それどういう意味よ」

さすがの私も、パルが何を言わんとしていたのか気がついたわ。
こっちが怒る前に、パルが折れた。

「ゴメンゴメン。冗談はここまでにしておいて。夕映、のどかとネギ君を追うわよ」
「わかりましたです。おそらく二人は、東大寺大仏殿へ向かったと思われるです。今から追いかければまだ間に合うです」

駆け出そうとした二人を追いかけようとしたんだけど、そこでちょっとしたみやげ物屋さんが目に留まったから、思わず足を止めちゃった。
それに気がついたのか、夕映ちゃんが足を止めて話しかけてきた。

「アスナさん、おみやげですか? どなたかに購入されるのですか?」
「え? ああ、うん。誰に買うかっていうのはチョットね。ただ、それ以前に何を買おうか迷っちゃってるのよね」

そんな私達のやり取りを聞いていたパルが、またもや極上の笑みを浮かべながら迫ってきた。おまけに今度は、メガネを光らせてるし。

「フッフッフ、なるほど、OK、わかったわ。私も夕映も、馬に蹴られて死にたくないしね。存分に、おみやげ購入に精を出してちょうだい」
「なっ、ちょっと、パル。何言ってんのよ」

パルの一言に動揺しちゃったけど、パルはすぐに表情と態度を一変させた。

「けど、アスナ。せっかく京都の修学旅行なんだから、奈良じゃなくて京都でおみやげ買いなよ」

そっか、そう言われると、そうね。
せっかくの京都の修学旅行なんだから、奈良で買うよりは京都で買ったほうがいいかも。

「そうね、どうせなら京都っぽいものの方がいいわ。奈良はついでみたいなものだし」
「そうそう、奈良の予定なんて一日しか組まれてないしね」

なんて話してたら、夕映ちゃんがちょっと不機嫌な表情で、

「二人とも、奈良にあやまるです」

ごめんね、寺社仏閣マニアの夕映ちゃん。






旅館に帰った後は、関西呪術協会に対する見回りで自由時間が終わっちゃった。
まあ、それは自分から買って出たことだからいいんだけど、朝倉とカモがなんか派手なことしてたみたいね。そっちのほうが気になったわ。
明日は、班別自由行動か。
このかのことも気になるけど、ネギの親書のほうも何とかしないと。
ああ、それとおみやげ。どうしようかな。
何を買うかまだ決まってないし。
ま、いいか、明日考えよう。

おやすみー。



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